9月23日(土)「パスと体の使い方」:講師:浅田就也

日程:9月23日(土)
時間:9:00~12:00(内の2時間)
場所:戸吹スポーツ公園
内容:「パスと体の使い方」
参加費:塾生(無料)、塾生外(1,000円円)
講師:浅田就也(プロラグビーコーチ)
20914271_1974999519452428_2537197098649234006_n
所属:RUGBY 5 Skills、ラグスター

コーチ指導歴。一橋大学、東京経済大学、朝鮮大学、桐朋中等、高等、神戸甲北ラガール、徳島 城東高校、名古屋工芸高校、大阪 勝山中学、タッチラグビーメンズ日本代表、鶴川中学校、熊本高校、京都 洛水高校

高校卒業後、ラグビー留学で訪れたニュージーランド北島北部の都市、オークランド。
ほどなくして足の怪我が悪化し、
入院を余儀なくされた青年は気持ちが半分、いや半分以上、折れていた。
ある日、病院の廊下をうつむきながら歩いていると大柄な男が声を掛けてきた。
「君はラグビーをやっているのか?私もラグビーをやっているんだ」
病院に似つかわしくないラガーシャツを着ていたからか、
同じラガーマンの匂いを感じてくれたからか。
青年はふと顔を上げて、驚いた。恐らく、それまでの人生で最も驚いた。
「カルロス・スペンサー!」
本人を前に思わず声が出た。
変幻自在なパスにダミーからのラン、そして巧みなキックで敵を惑わし、
仲間やファンからは“キング”と呼ばれるオールブラックスの10番。
オークランドは確かにキングのホームタウンだったし、そのことが青年の留学先選定に影響を与えたのは紛れもない事実だ。
でも、まさか、こんなところで会えるなんて!
「日本人か?」
「ラグビーは好きか?」
矢継ぎ早に質問をぶつけて来るヒーローに、
青年は顔をこわばらせながら、まだ不慣れな英語で、しかし懸命に答える。
「今度、ラグビーを教えてあげよう。ただし、俺にしかできない技を、だ」
数日後、病院の庭で、青年は贅沢な時間を過ごすことになる。
約束していたキングとのマンツーマンレッスン。
サッカー少年がペレやジーコから抜き技を指導されたら、きっとこんな気持ちだろう。
あるいはバスケットボール少年がマイケル・ジョーダンからエアウォークを教わったら!
華麗なパスダミーを伝授され、青年は言い表せないほどの幸福感に包まれていた。
目の前のキングはファンタジスタそのもの。決して偉ぶらず、異国から来たラガーマンに対して、古くからの友人のように接する人格者でもある。言わば神々しい。
だが、それよりも何よりも青年を驚愕させたのは、彼の卓越した基礎スキルだった。
キングがボールを触る度に、その大きな手と球体は一体化するように思えた。
「これが世界一のプレーヤーなのか!!」
大げさではない。腰が抜けた。
あの日のことが、今でも、いつまでも、青年の力になる。
数年の後に現役を退き、指導者として走り始めてからも。
ニュージーランドでコーチング資格を取得し、帰国。
「基礎スキルを身につけたプレーヤーを育てたい」
想いの原点は、あの日のキングとの忘れがたい邂逅にある